本研究では、中小企業における産業保健活動の阻害因子と促進因子を明らかにすることを目的とした。
そこで、福岡県、特に北部において中小企集の産業保健活動の実態についてまず調査し、本研究の基礎材料とした。企集の労働衛生レベル評価アンケートでは、流行値が概ね3点となり妥当な結果を得たものと考えられた。このことは、各項目を詳細に検射していくとさらに強く推察された。例えば、衛生管理体制で各法定のスタッフ数は満たしているものが多かったが、産業医の職場巡視や衛生委員会の開催、衛生年間計画の実施率などの質を問う項目では充分ではないものが多かったのもその例と言えよう。その他、作業環境管理、健康診断と事後措置、衛生・健康教育等の質問においても同様に、法定項目は満たそうとしているものの、その質については不十分であることが明らかとなった。これらの企業群において実際産業保健活動に従事している者により、KJ法を用いて本研究を遂行した。その結果、中小規模事業所を対象に産業保健支援活動を行うにあたっては、阻害因子・促進因子を念頭に置いた上で、担当の事業所で改善が可能な要因から重点的に取り組んでいくことが望ましいと考えられた。また、これらの要因は独立しているのではなく互いに密接に関連しているので、このような悪循環を断ち事業所の産業保健活動を活性化するには、当面、担当者とのコミュニケーションを図ることを課題として取り組み、徐々に活動の幅を広げていくと言った的を絞ったアプローチが必要であろうと考えられた。50人以上の事業所であっても地理的に分散したり、不規則勤務や出張勤務が主である場合には、訪問式による産業保健サービスの提供は効率が悪く、50人未満の事業所ではいっそう大きな問題になると思われるので、地理的にまとまった複数の事業所を産業保健の基本単位としてまとめ保健サービスを提供することや、個々の事業所に出向く方式から来所方式に転換することなどにより、保健サービスの効率化を推し進めていくことも今後の課題であろう。
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