内燃機関を稼動する作業場で発生する粉じんの実態について
調査研究課題名
内燃機関を稼動する作業場で発生する粉じんの実態について
主任研究者
織田 進 (福岡産業保健推進センター所長)
共同研究者
黒木 孝一 (相談員、黒木労働衛生コンサルタント事務所長)
有松 万樹 (相談員)
葉山 勝美 (葉山労働衛生コンサルタント事務所長)
1.はじめに

 粉じん障害防止対策については、労働省において昭和56年より7次にわたり、適切な作業環境管理、作業管理、健康管理及び労働衛生教育等の推進を内容とする総合的な対策を推進しており、その結果、全国的には昭和57年当時に比べ平成19年においては、じん肺の有所見者が概ね9分の1にまで減少しています。
 しかしながら、他の職業性疾病に比較すると、じん肺及びじん肺合併症の発生は依然として多い状況にあります。
 ずい道建設工事については、削孔・発破・ズリだし・セメント巻き立て等の作業により発生する粉じん(鉱物性)により、じん肺が発生することは周知の事実であり、このような職業性疾病を防止するために「粉じん障害防止規則」が定められています。
 しかし、現に道路として供用されているトンネル内において、おこなわれる作業については、交通事故の防止が主目的にされ、「どのような有害物が発生してるか?」「どのような作業者教育をおこなうか?」等を示した資料がありませんでした。
このため、昨年度の調査研究により「トンネル等で発生する有害物質を特定することを目的とし、「福岡外環状線 福大トンネル」で環境調査を実施しました。しかし、通行車両が少なく、採取した粉じんも定性分析に必要な量を採取できませんでした。
 今回は、国土交通省 九州地方整備局 北九州国道事務所のご協力をいただき、「国道3号線 岡垣バイパス 城山トンネル」を対象として標記の調査研究を行い、トンネル内における吸入性粉じん(Respirable dust)の量、総粉じん量の測定を実施し、遊離ケイ酸含有率と多環芳香族炭化水素の定性分析を行いました。
2.対象及び方法

 (1)対象作業所
岡垣町 城山トンネル
 (2)作業環境測定方法等
@作業環境測定方法
 PMー4(NWー254型)による粉じん濃度の測定
A測定項目、使用機器、分析方法
B 粉じん気中濃度(PM−4 NW−354型)・遊離ケイ酸含有率(X線回収装置) ・多環芳香族炭化水素(GCーMS)
Cその他
 公道上で、粉じん濃度測定を行う場合には、道路管理事務所の道路占有許可及び管轄の警察署に道路使用許可が必要

3.おわりに

 粒子状物質に発がん性が認められたのではなく、発がん性物質が微細粒子として又は、微細粒子に吸着して排出されている考えられます。
 また、文献ではディーゼルエンジンからの排気ガス中にはナフタレン、アントラセン が多く、ガソリンエンジンからの排気ガス中にはフルオランテン、ピレンが多く含まれ ているとの報告もあります。

 調査により検出された多環芳香族炭化水素は、物質の燃焼により発生する様々な化学物質の一部で、IARCやWHOおいて発がん性の疑われる化学物質としてリストアップされています。国内では、大気汚染防止法の対象物質に指定されている物もあります。大気汚染防止法では、ハイボリュームサンプラーを用いて24時間採取であり、作業により労働者がばく露しているかの判定に使用することができません。電源や採取器具の重量等を考慮し、本調査で使用したSKC社製フィルターを採取器具とする方法では、作業環境濃度の測定や作業者の個人ばく露濃度測定にも使用できると考えられます。

 作業者の健康障害予防のためには、トンネル内での実際の作業時に、「個人ばく露粉じんの粒径分布」を調査することも必要と思われます。